あまはじノート

amahaji note

石垣島旧盆行事アンガマー

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沖縄石垣島の旧盆といえば、「アンガマー」だ。あの世からの使者としてやってきたウシュマイ(おじいちゃん)とンミー(おばあちゃん)が、ファーマー(子孫)を多数引き連れ、各家を回りながら地方(じかた)の唄と三線(サンシン)にあわせて八重山民謡を舞うという行事。

 
沖縄島(本島)の旧盆行事エイサーは、この世に戻ってきた祖先の霊を歓送迎するためのものだけれど、アンガマーはあの世から(とっくに死んでるはずの)祖先と子孫が帰ってくるという設定。設定の時点で生と死の境界線がにじんでいることに今さらながらにおどろく。(遅い!)まあ、石垣島って八重山ってそんな場所なのだ。

 
※アンガマーを撮影したデータが手元にないため、別の写真を掲載します。

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 アンガマーのお面をつけたウシュマイとンミーは渋いデザインの着物という八重山らしい装束だけれど、ファーマーたちは、女性用の浴衣に派手な花笠、花笠の下はサングラスと手ぬぐいで顔全面をほぼ覆うというスタイル。感染症は関係なく以前からこの仕様だ。

ウシュマイとンミー、ファーマーを演じるのは、各地域(石垣、登野城、新川、大浜など)の青年会。旧盆の夜空に月が光る日。当該エリアのまちの中を歩いていると、どこからともなく「アンアガマーが来たよ アンガマーが来たよ」という唄が聞こえる。それがアンガマー集団がやってきた合図。

真っ暗な異界(路地の奥)からあらわれる島ぞうりを履いた集団。来訪神というよりは流しの宴会の神。お祝いごとや弔いごとが必要な個人宅に上がり込む。このとき、普段は入れないよそのお宅に入れるのは楽しみのひとつ。一見さんや観光客が排除されたり区別されることはないフリーダムな世界。

 
注:アンガマーが訪ねるのは招待された家だけです。

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開け放たれた座敷で演目が始まる。多くは八重山民謡なのだが、唄と三線を担当する地方(じかた)の安定感がすばらしい。アンガマーの高揚感を下支えするのはこの地方(じかた)の方たちの実力なのだ。


三線(うたさんしん)にあわせてファーマーの中から、2人~数人が真ん中に出て踊りを舞う。この日のために相当に練習を積み重ねているわけで、舞踊はキレキレだ。唄三線に呼応させるように足をトントンと鳴らすキメの瞬間がたまらない。

数曲の演目の後、どこからともなくタオルで顔を隠した人があらわれ、「ちょっとぉ、質問したいんだけどよぉ」と、ウシュマイとンミーに裏声で問いかけを始める。ここで浮世離れしつつも笑えるやりとりが続く。このユーモアにあふれた問答は見せ場のひとつ。

やがてまた演目が始まり……。一晩中、各家をまわりながらご先祖さまと子孫、そして見学者たちが一体となってにぎやかな夜を味わう。基本楽しむためのものなので踊りをまちがえても「あれ、失敗してるね。ワハハ」ぐらい。なにがあっても笑えるし許せるしというゆるさがいい。

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今になって思うに、ウシュマイ(おじいちゃん)とンミー(おばあちゃん)の役割はあるものの死んだ人らしく(?)男っぽさや女っぽさの呪縛が消えているのがいいなと。ちなみにンミーも男性が役をつとめる。ファーマーたちも性別がほとんどわからない状態で参加していることを考えると、アンガマーってジェンダーレスな行事だったのだなと。人間は死んだあと性別が消えていくのかもしれない。

 

では、よい旧盆をお過ごしください。


 ▶8月21日夜追記:2021年の石垣島アンガマーは中止になったそうです。


自分で撮影したデータが、今手元にありません。参考にこちらの動画をどうぞ。安定感ある地方(じかた)の唄三線がすばらしい。石垣青年会のアンガマーです。

www.youtube.com

 将来、アンガマーを見学したいと考えている方は、登野城(とのしろ)青年会のアンガマーがおすすめです。