総理大臣 業原(ごうはら)と白いけむり

沖縄糸満市平和祈念公園・「平和の礎(いしじ)」に刻まれた朝鮮人戦没者の名前(一部)2022年6月23日撮影


奈良県でボフッという白い煙があがった2022年7月8日。あのできごとを知った直後筆者は、「赤木さんはどうなるの! 責任をとらないでいくわけ~?」と叫んでいた。そして、TVドラマに登場する総理大臣 業原(ごうはら)を思い出していた。

※赤木さん=森友学園に関する決裁文書を改ざんさせられ、後に自死に追い込まれた財務省近畿財務局の元職員、赤木俊夫さんのこと。

ドラマの中の業原はややもすると幼い子どものように見える。昼食の会場を変更すると告げられ、「え、ホテルでランチしないってこと? ダメだよ、そんなの! だめぇ(中略)もとにもどしといてよ~」とか。

ホテルの非常ベルが鳴りひびく場面で、「え、なにこれ、なんで鳴ってるの?」「やだよ、もういいよ、このホテル出よう。なにかあったらどうすんのさ。出ようよ! 早くぅ~」などと発言するのだ。

これってもしかして、安◯元首相? ととっさに結びつけるのも必然。演じている俳優利重剛(りじゅうごう)が安◯元首相に重なる雰囲気を持っているのだ。利重剛が意識して安◯元首相によせたのかどうかはわからない。

”せりふ”のいいようが実際の安◯元首相と同じなのかどうかも不明だ。その上で、「業原のモデルは安◯元首相です」と言われたら、「やはりか」とすなおに受け入れられる。ドラマの中の業原は、暗殺計画がくわだてられるもある組織によって助けられ生き延びる。

幼稚な一面はあるが"まっとうな正義を持つ"人物としても描かれる。ここが、安◯元首相と異なるところだろうか。いや、それはわからない。

あのボフッという白い煙のあと。SNSが瞬間沸騰するように湧き上がった。まあ、衝撃だし、それが銃撃という日常目にすることがないものであればなおさらですよね。

その中である記者は冷静だった。個人のSNS上でも書くべきではない単語を避けながら状況を説明し、数時間後の結果についても直接的な表現を意識的に遠ざけているのがわかった。

一方、多くの人たちは真逆を突っ走っていた。ボフッの音が開始の合図。

どれくらいの人があのできごとにあおられたのかは不明だけれど、千万単位の群衆がひとつの方向にぐいぐい引っ張られて走っていくように見えた。現実に起こったできごとに興奮しているような、”まつり”や”歓喜”の雰囲気すらあった。


人ってこうやって扇動されるものなのか!?
人間て(筆者含め)、文字や画像、映像で見せられたものに、こんなにもかんたんに反応してしまうんだ。
こんなにもかんたんに引っぱられてしまうんだ。

 


1923年9月1日に起きた関東大震災後に流れた「朝鮮人が井戸に毒を撒いている」うわさに扇動され、朝鮮人が次々に殺されていった。

選別の目安は、「十五円五十銭(じゅうごえんごじゅっせん)」。きれいに発音できなかければ朝鮮人とみなされ殺されたという史実がリアルになった。

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うわさが伝わりその内容を疑うこともなく占領されてしまう心理。その共通点を通してみれば、今だって同じことが起きる可能性はあるんじゃないか。
なんらかの属性を標的にされ、扇動された大衆に囲まれたら逃げられないかもしれない。

やがて白いけむりの発生当事者は、かつて自衛隊に所属していた(=日本国籍である)ことがわかった。それを聞いて「は~っ」と息をはいた人はどれくらいいたのか。

ネット上の対話で、「あの数時間、自分と同じ属性の人だったらどうしようかと思ってどきどきしていた」「あの日、ちょうど海外からの人を案内していて中国語を話す必要があったけれど、都会の人混みで中国語を話すのがこわかった」と話していた人がいた。それぞれ、日本以外の国籍を持つ非白人だ。


筆者が感じたのは、人間は冷静さを失えばどこにでも転がっていってしまう可能性があり、それをSNSが何千倍にも増幅させてしまうという現象への恐怖だった。


余談
数時間後の”結果”のニュースを、SNSでわざわざ広めている人がいたことにもおどろいた。そのうち知ることになるのにと思った。

総理大臣 業原が登場するのは、「AVALANCHE(アバランチ)」という関西テレビ制作のドラマ。(2021年に放映)上記に書いた暗殺計画は第7話。業原は、ボンクラだけれど愛されている総理という設定。※動画配信サイトで見られます。