あまはじクロニクル

amahaji chronicle

2022年にドラマ「すいか」を観る

すいか|日本テレビ

「すいか」は、2003年7月から9月まで放映されていたTVドラマ。基本はコメディ路線。脚本は、木皿 泉(きさら いずみ) 。

動画配信サイトで見つけたので、今の目線で視聴してみた。


※木皿 泉=妻鹿 年季子(めが ときこ)と和泉 務(いずみ つとむ)のユニット

 

主人公素子(もとこ)は、実家暮らしの銀行員で貯金が趣味。ある日、同僚でただひとりの友人である馬場ちゃんが3億円を使い込み逃亡する事件が起こる。事件後の混乱に巻き込まれる素子。その過程で、まかない付き下宿「ハピネス三茶」のチラシを拾う。

「ハピネス三茶」は、築数十年は経ているであろう木造の二階建て。目の前に疎水が流れる環境。

住んでいるのは、いかなるときもロジカルシンキングをつらぬく教授パプアニューギニアの研究者で大学教授)、家賃を滞納しがちなエロ漫画家 絆(きずな)、親から引き継いだハピネス三茶を運営する芝本の3人。

親から自立できない自分に思い悩んでいた素子は、馬場ちゃん事件に日常がかき回される中ハピネス三茶への引っ越しを決意する。

(素子は小林聡美。馬場ちゃんは小泉今日子、教授は浅丘ルリ子。絆はともさかりえ、芝本は市川実日子が演じている)

一話が45分の8話完結。考え込まれた伏線を8話の中で拾い上げ回収していく脚本がみごと。一話に多くのできごとが詰め込まれるが、矛盾や混乱はなく視聴者は無理なくひっぱられていく。

せりふもふるっている。

「お姉ちゃんじゃなくて、私が死んだほうがよかったのかも」と言う絆(きずな)に、「そんなこと言うもんじゃありません。誰が死んだって同じぐらい悲しいに決まってるでしょ」と返す素子。

「馬場ちゃんからなにか聞いてない?」と質問する上司に、「仕事ができない課長に”女の子”って言われるたびにムカつく。あたしら34だっつの。なにが悲しくてお昼のお弁当、電気もつけられない部屋で食べなきゃなんないのか。節電て言うけど、支店長室は電気ついてんじゃないか。会社は、あたしたちのことを粗末に扱ってんじゃないか。そのことがとてもくやしい(以下略)」
(馬場ちゃんが話していたという設定だが、素子自身も同じことを思っている。このせりふ、2022年においては”会社”を”国”に置き換えても通用する)

(授業中に泣いてしまった学生について)「私は泣くことが許せないんじゃんないんです。考えることをやめて適当にやり過ごすことが許せないんです」と教授。

※上記のせりふは大意です。

直球じゃないふりをしながら、確実に投げ込まれるせりふの数々。発言でもって相手にやんわりと仕返しをするのもいいし、コメディの体をとりながら次々に飛んでくるステレオタイプな価値観をぱりんと割っていく構成もうまい。

映像や演出に、ギミック(=仕掛け)があふれているのもいい。

木皿 泉の脚本ありきのドラマ。この作品に関して(大げさに書くと)木皿 泉は脚本界のポン・ジュノだ、と思う。制作者としてのたくらみ具合において同等かと。

ポン・ジュノ=映画「パラサイト 半地下の家族」の監督

そして、このドラマをさらによきものにしているのが擬音とOST(サントラ)。担当は、金子隆博。(映画「めがね」や「かもめ食堂」などのOSTなども制作)。

素子が上司に理不尽なことを言われ「ちょっ、それっ」という表情になる。そのとき背景に、ファックス送信時の音声が流れるのである。あの「ピィーーーィー」という意味なき音。”虚無”の表現として最高なのではと思う。

※ファックス送信の音声=電話機からファックスを送るときに発生する音のこと。

2003年放映を感じさせるものを強いて言えば、出演者がガラケー(二つ折りの携帯電話)を使っていたり公衆電話が登場したり、ハピネス三茶で新聞を購読していることぐらい。

2022年に見ても文句なしの作品。

【メモ】
言いたいことを言いながらやりたいことをやる。我が道を行く教授がかっこいい。逃亡者 馬場ちゃんを演じる小泉今日子がかっこいい。「もう帰ってちょうだい」が決めぜりふの、バー「泥船」のオーナーを演じるもたいまさこの存在感もいい。

※差別的、侮蔑的ではありませんが、年齢、容姿に関する発言がドラマ中に2ヶ所ほどあります。