果たして貧困とは何なのか?
2021年夏、オリンピックを横目にホームレスと共に生活を見つめた衝撃の記録。
一日七食のホームレス!? 貯金ができるカラクリとは?
寝床探しから襲いかかる災害・犯罪の恐怖まで、家に帰らず2カ月間の徹底取材。
著者はフリーランスのライター。コロナ下(禍でもある)の2021年夏、自ら路上生活を経験しようと決め部屋を出る。
そうして、東京都庁下、新宿西口地下、上野駅前、上野公園、墨田川高架下、荒川河川敷で約2ヶ月を過ごす。
現金7,000円を持ち、路上に出勤するかのように自宅を出る著者。「あ、自宅は残したままなんだ。その設定どうなの?」と、ちょっとツッコミを入れた。(捨て身でやれよみたいな感じ? いったいなにを期待しているのか)けれども読み進めるうちに、そこに意味はないのだと納得できる。
表紙は、弁当の写真のアップ。白飯と麺、3種類の茶色いおかずにさっと塗られたマヨネーズ。プラスチックのフォークスプーンは、路上でさまざまなものを受けめるホームレスの人たちの手のようでもある。
はんこでポンと押したような「ルポ」の文字。白抜きの「路上 生活」の4文字は、見えたり見えなかったりするだろうけど、ここにいるんで、とでも言っているかのよう。
感心したのは、ホームレスの人たちの流通と情報網だ。
衣類や靴、タオルなどの生活用品は、NPOやボランティア団体からの配給だ。冬になると防寒着や毛布が届けられるが、寒さが去ると捨ててしまうという。理由は、次の冬になるとまたもらえるから。
食事は、曜日ごとに配られる炊き出しでまかなう。観光バスの廃棄弁当が回ってきたりNPOやボランティア団体が配る弁当や消費期限の近くなった介護食もやってくる。
カレー(宗教関係の団体が配るベジタリアンカレーもある)にカレーうどん、中華丼、ハンバーグ弁当、スープ、カップ麺、アルファ米、バナナ、トマト、ソイジョイ、アップルジュース……。
カレーなどの炊き出しは、一度食べた後すぐ最後尾にまわり2周目を食べてもいいらしい。2回目大盛りなども可。ある場所に並べられた10個ほどの一斗缶の中には、食料が入っている。好きなだけとは言えないが、これも持っていける。
キリスト教会の講話を聞いたら1,000円札(複数枚のこともあり)がもらえることもある。
カップラーメンのお湯、シャワー、洗濯機、トイレは、どこでどのように利用すればいいのか、ホームレス間の情報がある。路上にいて厳しいのは、暑さと雨だという。
ホームレスの人たち=空き缶拾いのイメージは強いが、空き缶拾いができるのは一定の条件(自分で建てた小屋があるとか)に恵まれた人だけ。これは、空き缶保管の都合上。
年金生活だけど路上を選んだ人もいる。年金が7万円で賃貸に住むのは厳しいが、路上にいれば家賃の分が浮くからやっていけるのだという。
やりたくないことをやらないでいるために、路上に出た人たちもいるといるのだ。
賃貸や持ち家から離脱しても生きいく方法はある。けれども、情報をつかめないとツラくなりそうだ。この本を読んで、そんなことを思った。