あまはじノート

amahaji note

書籍「沖縄の歩いた道」新崎盛暉(ポプラ・ブックス)

「沖縄の歩いた道」新崎盛暉(ポプラ・ブックス)は、沖縄の文化と歴史、近代史について書かれた子ども向けの本。

 

1973年発行。沖縄返還(復帰)1972年なので、沖縄が日本に復帰した翌年に出版されたことになる。沖縄返還(復帰)=沖縄がアメリカの統治下から日本の統治下に戻ったこと。2022年=沖縄返還(復帰)50年。

1990年に14回目の増刷がされており、発行から17年の間に多くの人に読まれたと思われる。


※著者の新崎盛暉(あらさき もりてる)氏は、東京生まれ。沖縄に移住後、沖縄大学の教授を長年勤め、沖縄に関する著書を多数書いた。反戦運動家としても知られている


著者は言う。

(前略)この本は、沖縄の歴史についての知識をうるための本ではありません。沖縄の歴史についてかんがえるための本です。
(中略)
沖縄の歴史は、ほかと無関係にそれだけが孤立しているわけではありません。日本の歴史、もっとひろくいえば、世界の歴史のながれともつながっているのです。
沖縄の歩いた道「はじめに」より

全286ページ、厚さ2.7cm。子ども向けの本とはいえ、沖縄の近代史について相当に広い目で書かれている。(人頭税や沖縄の言葉、通貨の変遷、米兵の犯罪などにもふれている)

以下に目次を引用する。

プロローグ”帰ってきた”沖縄
なにが帰ってきたのか?
生活に苦しむ沖縄県
第1章 沖縄の文化と歴史
沖縄とはどんなところか
島津(しまず)の琉球支配
第2章 近代日本のはじまりと沖縄
明治維新と沖縄
沖縄県ー中国(清)ー日本(にっぽん)
第3章 太平洋戦争と沖縄
天皇と戦争
沖縄戦はじまる
第4章 日本の独立と沖縄
占領下の日本と沖縄
対日平和条約と沖縄
第5章 ベトナム戦争と沖縄
アメリカの支配と島ぐるみ闘争
太平洋のキイ・ストーン沖縄

沖縄は古くは「琉球王国」という独立した国で、独自の言語と文化を持ち、古くから中国や朝鮮、東南アジアとの交易していた。

それなのになぜ、日本の一地方に組み込まれることになったのか、(琉球国琉球藩になり、やがて沖縄県となった)なにがきっかけで侵略され日本の支配下に置かれたのか。

この本には、今の沖縄につながるさまざまな事象が書かれている。


なぜ、2023年になった今もアメリカ軍の基地があるのか。

米軍基地の現状と日米地位協定 - 沖縄県 より

なぜ、島の上空を戦闘機が飛び続けるのか。

twitter.com

なぜ、あらたに基地が建造され続けているのか。

www.tokyo-np.co.jp

 

なぜ、人口が2,000人にも満たない小さな島(与那国島)に自衛隊の駐屯地が建造され、地対空誘導弾(ミサイル)部隊が配置されようとしているのか。

www.jiji.com

人口50,000人弱の島(石垣島)でも。news.yahoo.co.jp

 

人口50,000人超の島(宮古島)でも。

globe.asahi.com

「沖縄がその歴史上、つねに手段として利用されてきた」p.17より


読んでいて、これは現在の話ではないのか? と錯覚することが何度もあった。


沖縄から見た沖縄、日本から見た沖縄、アメリカから見た沖縄。この3つの沖縄の姿は、2023年の今も引き裂かれたままだ。

 

【メモ】

記事中に「なぜ、島の上空を戦闘機が飛び続けるのか」とあるけれど、(筆者が知るのは那覇市内のみ)那覇市においても十数階のビルのすぐ上を、国際通りの上を、アメリカ軍の戦闘機が自由に飛ぶ光景が日々展開される。ゴゴーッと鳴ったら戦闘機。


その音。筆者は沖縄で戦闘機の音を聞くと映画「地獄の黙示録」を思い出すのだ。(「地獄の黙示録」はベトナム戦争がテーマ。当時沖縄からも兵士や戦闘機がベトナムへ出撃していった)

地獄の黙示録」は映像の中のつくりもので、パソコンを閉じれば消える。けれども、沖縄を飛ぶ戦闘機は画面から消えることはない。スーパーの上を、民家の上を、学校の上を、生活圏の上を、ゴゴゴゴゴーォー、バリバリバリバリ


Q.アメリカ軍に「配慮」というものは? A.ございません。(なんでも好きにできると思っている相手に、配慮などするものだろうか?)その日が沖縄のお祝いの日、鎮魂の日であったとしても、「わしら、飛ぶもんね」。(「朝の飛行は格別だ」などと言ったりしていないだろうな?)


【余談】

プロローグの「帰ってきた沖縄」は、「帰ってきたウルトラマンにひっかけていると思われる。(ナイスタイトル)※「帰ってきたウルトラマン」は1971年4月~1972年3月に放送された(この本が発行される少し前)特撮アニメで、この作品に参加した脚本家、上原正三氏と金城哲夫氏が沖縄県出身なのである。

 

ことばに関するページで、「標準語」という基準を用いていないのがよかった。日本で使われていることばは、すべてその地方や場所の”方言”というあつかいをしているのが印象に残った。


※新刊での購入は難しいかと思われます。図書館や古本屋などで探してください。