『野の花の入院案内』は、医師である著者がホスピスケア診療の中で出合った人々について書いた本。
※徳永氏は、以前に紹介した『隔離』というハンセン病者に関する本を書いた方です。
末期がんの患者さんの”終末”におけるできごとを書いているのだけれど、”終末”というよりは”週末”と表記したくなるような、どこかとぼけたような(ただし、ふざけてはいない)みんなでひなたぼっこでもしているの? とでも聞きたくなるような本。
※みんな=医師と看護師、患者さん、患者さんの関係者
面白いなと思ったのは、「野の花問答」というQ&Aのページ。答えを読むと、「は、そうだよね」とうなずきたくなる。
いくつか抜粋する。
私の生活の、精神のどこまでを捧げればいいんでしょうか?
捧げるということじゃなくて、自分ができること、したいことをする。それでいい。捧げてはいけない。(以下略)
『野の花の入院案内』p.54より
ベッドに横たわっている病人のことを思うと、毎日罪悪感にさいなまれる。ごはんをパクパク食べることも……
(前略)罪悪感をもっているほうが正しくて純粋みたいだけど別の大きな問題が起こってきて、病人のバックアップもできなくなる。(中略)
そうすると非情であることって意外と大事ですね。かたっぽで亡くなっていくのに、かたっぽで食べて「おいしい」と思う自分。それはある意味では避けられないし、大切なことだし。(以下略)
『野の花の入院案内』p.55~より
著者自身も患者さんを前にして罪悪感を感じた時期を経て、非情であっていいとたどりついた様子。
いろんな選択肢があるときに、正しい答えがわからない。何か腑に落ちないのです
正しい答えは、腑に落ちるやつなんです。腑にさえ落ちれば、だいたい誤っていようが何しようがかまわない。だけど実際は、ずーっと腑に落ちないことが多いんですよね。むつかしいとこですよね。
『野の花の入院案内』p.104より
いけないことだと思うのに、「かわいそうに」と思ってしまう
それは勝手ですね。
『野の花の入院案内』p.141より
!
いけないことだと思うのに、「勇敢に死を迎えて」と思ってしまう
まあそれも勝手だけど、大きなお世話って感じ。
『野の花の入院案内』p.142より
!!
「死なないで!」と言ってはいけない?
自由ですねえ。言っていいですよ。言っていいと、心から思います。
『野の花の入院案内』p.142より
ほぅお~。
筆者はある雑誌のインタビューで著者を知った。発言がえらく自由で、医療者にもこのような人がいるのかと興味を持ったのが最初。医療者でありながら思想家のような一面を持った人。
この本でも、自由に飛ばしています。