野木(のぎ)亜希子脚本「MIU(ミウ)404」は、2020年に放映されたTVドラマ。警視庁の“機動捜査隊”(通称機捜=きそう)が舞台。
第4話の ”ミリオンダラーガール”がいい。
※以下、ネタバレあり
主人公は、元ホステスの青池透子(とうこ)。透子は、ホステス時代に客に連れられていった裏カジノで借金を作り返せなくなってしまう。借金を返すために風俗の仕事をしながら、裏カジノでもバイトを続ける日々。ある日、その裏カジノが摘発にあい透子も逮捕される。
その後、執行猶予があけて就職した小さな会社は、暴力団関係の資金洗浄を請け負う組織だった。
わたしはまた、暴力団の下で働いていたのか。
ようやく普通の生活を手に入れたと思ったのに。
みんな、普通のお店だと思ってる
わたしだって、昔のことがなければ気がつかなかった
社長は、わたしをバカな女だと思っていて、平気で入出金の指示を出してくる
毎月大金が流れてる。AからBへ、BからCへ
汚いお金がきれいなお金にロンダリング、リング
もし通報しても、Kは次の仕事を用意してくれるわけじゃない
『MIU404 #4』より
※K=警察(SNSへの投稿という設定)
会社のお金の流れをつかんだ青池透子は、自分の口座へお金を流す。
¥論だRINGの流れ把握。やれそう
ぜんぜんバレない。楽しくなってきた
『MIU404 #4』より
※¥論だRING=マネーロンダリング(SNSへの投稿という設定)
資金洗浄のためのお金が盗まれても警察には届けないだろう。そう考えて出金した札束を会社の机のひきだしに隠し、やがてその金額は1億円(ミリオンダラー)になった。
わたしはまたすっかり汚れてしまった
どうせ汚いお金だ。汚いわたしが使ってなにが悪い
引き出しいっぱいになったら、どこへ行こう?
どこなら、きれいに生きられるだろう?
『MIU404 #4』より
ドラマは、透子の所業が会社に知られ逃亡するところから始まるのだが、逃亡の初期に、会社関係者に追われ1発の銃弾を体に受ける。透子は、通りすがりの薬局で応急処置をしただけで逃げ続けることを選ぶ。
賭けてみます。
今まで、勝ったことないけど。
『MIU404 #4』より
ミリオンダラーをあるものに替えて向こう側の世界へ飛ぶつもりだった透子。その向こう側には、希望があるはずだった。
「もう、死ぬのかもしれない」と思ったとき、街角に掲示されたあるポスターに出あう。
誰にも助けられなかった自分は、ずっと誰かを助けることもできなかった。けれど、最後にひとつだけ。誰にも決められない人生を選ぶために、”弱くてちっぽけな小さな女の子”だった自分が”弱くてちっぽけな小さな女の子”を助けると決断するのだ。
つまらない人生
誰が決めたの
弱くてちっぽけな小さな女の子
逃げられない
なにもできない
そんなの嘘だ
自由になれる
わたしが助ける
最後にひとつだけ
『MIU404 #4』より
ドラマだけを見れば、透子は犯罪者ということになる。けれども筆者にとっては、冷たい雑踏の中からミリオンダラーをつかみとり立ちあがった反逆者だ。
このセリフが、効いていた。
もう風俗に戻りたくない。
現金もらった政治家も、ワイロもらった役人も、起訴されないんだって。
金持ちの世界、どうなってんの?
わたしなんて、手取り14万で働いてんのに。草。
『MIU404 #4』より
※草=笑
※『MIU404』は、さまざまな動画配信サイトで視聴できます。
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野木亜希子脚本の『連続ドラマW フェンス (全5話)』が、WOWWOWで2023/3/19(日)午後10:00から放映開始。
沖縄島が舞台のドラマです。
WOWWOWは、TVがなくてもパソコンやスマホで視聴できるようです。一話目は無料。