沖縄県糸満市にあるひめゆり平和祈念資料館が監修発行した絵本「ひめゆり」。発行日は、沖縄戦後66年目にあたる2011年の慰霊の日(=6月23日)。
あとがきに、”言葉使いや文章表現を小学校1、2年生程度にした”とある。けれども、小学校1、2年生には文章も絵もむずかしいと想像(大人と一緒に読む想定? それでもむずかしいような?)。
むしろ、大人になった人が視覚的に沖縄戦の中のひめゆり学徒隊を理解したいときに見るといいのでは? と思う。
たとえば、「ひめゆりの塔をめぐる人々の手記」仲宗根政善(角川文庫)を読みながら、または読んだあと。
守る人のいないこの学園、1万予冊の蔵書のある図書館、講堂の歴代校長の写真、ピアノ、ミシン、理科室の実験器具機械、池のヒゴイ、ニワトリ、校庭のいっさいの草木は、いまや戦火の中に放置されている。
「ひめゆりの塔をめぐる人々の手記」仲宗根政善著(角川文庫)より
この記述を読んで、絵本の中に描かれた見開きの校門前の相思樹(そうしじゅ)並木と校舎(赤瓦の木造が美しい)のページを見れば、ここにあったすべてが破壊されて消えてしまったことの大きさが想像できる。この場所にあった記憶も壊されてしまったことがわかる。
(筆者は、この美しい校舎の中に入ってみたかったし、生徒たちの声は、この木造校舎の中でどんな具合に響いたんだろう? などと想像しました)
遠い世界のことだと思っていた戦争が海の向こうからやってきたこと。戦争が長引くにつれてスカートがもんぺになり、バレーボールをしていた校庭で防火訓練が始まり、やがて陸軍病院へ出発する日がやってきて……。
1冊の絵本の中で説明するにはできごとが多すぎる沖縄戦。それでも見開きのページを上手に使いながらそれぞれの場面を絵で見せている。絵画の創作物として上質。
じっくり眺めていくと、学徒たちの息づかいやどんなにか不安だったろうという心情、体をぶるぶると震わせるほどの恐怖が伝わってくる。
「ひめゆり学徒隊」とは?
沖縄県島尻郡真和志町間切安里村(現・那覇市)にあった沖縄師範学校女子部(略称、女師)と沖縄県立第一高等女学校(略称、一高女)から、女子生徒222人と引率教師18名(合計240名)から編成された学徒隊のこと。
この本は、amazonで定価2,200円。図書館にもあまり置かれていないようなので、実際目にするにはハードルが高いかも。
近隣の図書館におかれているかどうかは、カーリルというサイトで検索できます。
興味がある方はぜひ。
筆者の余談:実際の絵本の表紙は、このような感じです。校舎の窓から見えるのは、一面の海。背表紙側には、風になびく白いカーテンが描かれています。
この記事の冒頭の画像は、筆者がフリー素材を使って制作(というほどでもない。アプリ使用でとても簡単)したもの。
陸軍病院に従軍し血と砲弾だらけのぎりぎりの突風の日々に投げ込まれたひめゆりさんたち。
作っていて、ジェンダーにかたよりがあるといわれても、花でいっぱいにしてあげたくなったし、もっと星でキラキラにしてこんぺい糖なんかもちりばめて甘々(あまあま)にしてあげたかった。(画面がうるさくなるのでやめましたが)感傷的かなと思ったけれど。