毎年旧正月になると Apple (中国大陆) - 官方网站(Apple china)で、iPhoneを使って撮影したショートムービーが公開される。旧正月に届けられる小さなおくりもののような作品なのでぜひ観てほしい。
2023年の旧正月は1月22日。これを書いている今日は19日だからまだ新作は観られないけれど(22日になれば上記のURLから観られるはず)、旧正月の10日ほど前に公開されるようです。2023年の作品は、 iPhone 14 Proで撮影した「过五关(=五つの峠を超えて、Through the Five Passes)」Peng Fei(ペン・フェイ)監督作品。
Shot on iPhone 14 Pro | Chinese New Year - Through the Five Passes | Apple - YouTube
このシリーズには、過去の作品にもいいものがあるので紹介したいと思う。
筆者のお気に入りは2020年公開の「女儿(Daughter=娘)」で、セオドア・メルフィ(Theodore Melfi)という監督が制作したもの。
ひとりで娘を育てるタクシードライバーが主人公。このタクシードライバーの役を演じているのが周迅(Zhou Xun=ジョウ・シュン)という中国の俳優さん。(岩井俊二監督の「チィファの手紙」にも出演しています)
中国のお正月に欠かせない餃子のことを話すタクシードライバーの母と娘。母がぽつりと「もう長い間、食べてないな」と自分自身の母親(娘の祖母でもある)が作る餃子を思い浮かべる。
後日、雨の日にぐうぜん客としてタクシーに乗ってきた母親に「お母さん、わたしお腹すいた」と告げる……。
このときが過去にけんかをして家を飛び出して以来の再会で、母親(祖母)はずっと娘と孫を探していたというストーリー。
「なんで子どもが乗ってんの」と言われたりしながら、タクシーに自分の娘を同乗させて仕事をする母と、キッチンペーパーの芯で作った万華鏡(というか望遠鏡?)で外の世界をのぞく娘。
そのふたりに、自分が作った餃子を食べさせようとする母親(祖母)の親子三世代の物語です。
多くの人が自分の家族や知り合いに再会する旧正月にあわせた”再会”がテーマのショートムービー。心の箱にしまいこんだ世界を開封するような物語。(とてもいいです)
公式サイトからはすでに削除されているので、リンクをはれないのが残念です。
(こっそり言いますが、筆者は Chinese New Year 2020 short movie by Apple | Shot on iPhone 11 Pro | 'Daughter' というタイトルのyoutubeでぐうぜん観ました。
やー、これ、メイキングも面白くてですね。メイキングは Shot on iPhone 11 Pro — Chinese New Year — Making of ‘Daughter’ with Director Theodore Melfi これもyoutubeで観たような気がします)
ちなみにですね、2019年に賈 樟柯(ジャ・ジャンクー)監督がiPhone XSで撮った「一個桶(The Bucket)」もいいです。探してみてください。
では、良い旧正月を。
【追記】2023年Apple chinaショートムービー「过五关(Through the Five Passes)」を観て
Shot on iPhone 14 Pro | Chinese New Year - Through the Five Passes | Apple - YouTube
京劇を志す主人公が、5つの困難を乗り越える物語。あるとき、主人公は舞台で失敗をしてしまうのだけれど、その後悔の心情を落しかけの舞台化粧で表現しているのがうまい。
「給你(ゲイニ=これ、あげる)」と、同じ舞台に立った役者から差し出されたキャンディと、それを受けとるふるえる手。
4:12あたりからはじまるバンド演奏の音楽がなんとものんきで気に入った。(なんという曲なのだろう)刹那(瞬間)を演じる役者たちのまっすぐな意志が伝わるようなエンディングの音楽もいい。