あまはじノート

amahaji note

『みっちんの声』石牟礼 道子・池澤 夏樹

『みっちんの声』石牟礼 道子・池澤 夏樹(河出書房新社

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2008~2017年の期間、作家 石牟礼道子(みっちん)のもとに池澤夏樹が訪れ、日々の食べ物やこどものころの暮らし、水俣、天草、沖縄、また石牟礼作品について語りあう、さりげないながらもおどろきをもたらす対話集。

『みっちんの声』

対談というほど儀礼的ではなく、ファン(池澤夏樹)が推しの作家(石牟礼道子)のもとに通いつつ、お茶を飲みながら、またふかした芋を食べながら、体調を気遣いつつ創作のひみつに触れていく。

 

作家生活40数年の池澤夏樹氏であっても、石牟礼道子の作品の前では自信をなくしてしまうというのが興味深く。(石牟礼道子の作品を読んで、自信をうしなわずにいられる作家などいるのだろうか?)思わず、「わっかる~」とつぶやく筆者。

 

『苦界浄土ーわが水俣病』は、読む者の生命線を持っていかれるほどの迫力があるし、たとえば『椿の海の記』、その語彙と場面、登場人物(+生き物)たちの働き、草と花、木、土、海、風、人間の足音と声と想いと。時代と空間を超えた創作に、うならずにはいられない。

石牟礼道子は、こどものころから、ワイルドサイド(=はずれた世界とでもいうか)にいた人なのだなあと思う。

 

それはともかく、この本は、作家同士の対話なのに、気取らなさがただよっていてやわらかい。春の畑のような対話集だ。