あまはじノート

amahaji note

「鎮魂の地図」大城弘明著(未來社)

 

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『鎮魂の地図』大城弘明著(未來社)

「これは御嶽(うたき)なのですか?」
「いーや、違うんだよ。沖縄戦で一家全滅した家のね、トートーメー(位牌)」

76年前の沖縄戦で生命が途切れ自分の家に帰って来れなかった人たち。その人たちが住んでいた家の跡地に建てられたコンクリートの小屋や即席作りの位牌がおかれた場所。

※御嶽(うたき):沖縄にある聖域。

小さな家のようなもの。人が住める広さはなく、倉庫のように荷物が置かれているわけでもない。誰かがいるようでもありいないようでもある。

3人家族、糸満市域で3人戦没
7人家族、糸満市域で7人戦没
4人家族2人が糸満市域で2人が外地で戦没

-写真集より数字の部分のみ引用(引用のルールに沿っていませんがご容赦を)


沖縄の糸満にこのような場所があることは、2020年12月那覇市民ギャラリーで開催されていた美術展で知った。ある作家が絵のモチーフにされていたのだ。

「(これは)どこにあるのですか?」
糸満にあるよ」
糸満のどこですか?」
「ふつうに歩いてたらいっぱい見つかる」

こんな具合に教えていただいた。現地ではめずらしいものではないんだよ、たくさんの人が死んでいるからね。ということなのだろうか。

もうそこには誰もいないのに、そこにいた人たちの”不在”を知らせる位牌。誰も語らない、誰も笑わない。戦争から76年が過ぎた今も帰ってこない人たち。そこにいないけれどいる=不存在の存在。ただひっそりと無言で。


メモ:この写真集を積極的に見ようとする人はいるのかと考えるとほとんどいないような気がする。位牌の存在そのものがとてもあいまいだし、一部の人にとっては近づきたくない見たくない気持ちもあるだろうと想像できる。

図書館から借りたときも開かれた形跡がなかったし、むしろ開かれないことに意味がある本なのではと思う。写真集としてこの世に存在することが大切なのだ。

『鎮魂の地図』大城弘明著(未來社)は、沖縄県立図書館5Fに配架されています。

 

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せめてもの鎮魂として
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Brian Eno's 'By This River', interpreted by the Trio Fibonacci
ブライアン・イーノ「By This River」のアレンジ)


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