バスで行く糸満(いとまん)市・「魂魄(こんぱく)の塔」「熊野鉱山」 

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魂魄(こんぱく)の塔への道すがらにいたあだんの樹


沖縄島は南北にくねっと長い島である。  

その島を表現するとき地元の人は、「南部」「中部」「北部」という区分を使う。沖縄島を5等分したうちの一番下1/5を「南部」、その上1/5を「中部」、残り3/5を「北部」と呼ぶのだ。 

 

一番下1/5の南部にある糸満(いとまん)市に行った。  

漁業と農業がさかんな糸満は、「沖縄戦」最後の戦いの地だった場所だ。1941年末から始まった太平洋戦争。その末期1945年4月~6月までの約3ヶ月間続いた戦いが沖縄戦だ。  

 

今回の糸満行きは、「魂魄(こんぱく)の塔」と「熊野鉱山」を見るのが目的。

 

「魂魄(こんぱく)の塔」とは?
沖縄戦後、焼け野が原に野ざらしのまま散らばっていた遺骨を地元の人たちがひろい集めて合祀したのが「魂魄(こんぱく)の塔」。
 

「熊野鉱山(くまのこうざん)」とは?
今年(2021年)に入り、「糸満沖縄戦の遺骨が残るエリアの土を業者が砕石しようとしている。その遺骨混じりの土砂を、北部で建設中のアメリカ軍の辺野古(へのこ)新基地に使うんじゃないか」という問題が起きた「熊野鉱山」。  

「熊野鉱山」は、「魂魄の塔」に隣接するなだらかな山。 
 

どうやって行く?
バスで行けばいいんや! ゆいレール旭橋駅に直近の「那覇バスターミナル」から、那覇バス「89番糸満線」に乗り「糸満バスターミナル(料金は550円)」へ。 

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糸満バスターミナル・海がすぐ近くだ

糸満バスタで「107南部循環線(真壁・喜屋武廻り=まかべ・きゃんまわり)」乗り換え(どこ行きのバスでも写真の場所から出発しまーす)、「米須(こめす)入り口(料金は330円)」まで! 

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入り口にある立て看

バスを降り、さとうきび畑が広がるアスファルトの道を南に向かって1.1km。 

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アスファルトの道をゆく!

 気温31°C、湿度82%、風速6m/s、晴れ。

太陽の光が湿気をからりと打ち消してくれたこの日。

目的地に向かう道すがらの風がやさしい。

地上におどる光と影のゆらめきがうつくしい。

 

歩くほどに思考の回路がストップし、ここが76年前戦場だったとは想像できなくなっていった。

 

この広い場所をたくさんの人が逃げまどったはずなのだけど……。

映像や感情を構築しようとしてもしゃぼん玉のように消えてしまう。

 

今は違う階層にいるのだろうとただ歩いてみると、

静かでやさしい世界があらわれた。

なんならここで死んだ人たちに歓迎されているような?

「もういいんだよ」という繊細なささやきが聞こえたような?

 

以前訪れた広島でも感じた記憶。

駅に降り立ったそのときから広島は、「やさしくて居心地のいいまち」だった。

滞在中、絶えまなく見えない人たちに守られているような安心感があった。

極限の苦しみや悲しみを超えた世界は、深いやさしさを抱き合わせるようになるのかもしれない。 

 

「魂魄の塔」

当時は35,000柱(はしら)、つまり35,000人分の方の遺骨が祀られていた。 現在遺骨は、摩文仁(まぶに)が丘の国立沖縄戦没者墓苑に移されている。※写真なし(撮影に失敗) 

heiwa-irei-okinawa.jp

  

「熊野鉱山」を見学

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「魂魄の塔」のすぐとなりにある「熊野鉱山」

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「立ち入り禁止」の看板の向こうが「熊野鉱山」

土砂砕石(さいせき)問題の当該地「熊野鉱山」。いったん土がむき出しにされた後工事がストップしたため雑草が茂っている。 

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伐採後の木の残骸が

 木を伐採する前は、写真の奥に見えるような木立の姿があったはず。 

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現場には、作業の進行を待つクレーン車が一台

 現場を見て、ここに遺骨が埋もれていると実感するのは相当にむずかしいなと感じた。どこにでもある丘陵にしか見えない場所を目にして、「ここには遺骨が埋もれているんじゃないか?」と疑いをかけストップをかける。※実際に遺骨が見つかっているとのこと。
 

おそらくそれが可能なのは、経験と想像力を駆使でき高い解像度を持つ人のみのはずで、今回の場合、長年遺骨を探し続けてきた具志堅隆松(ぐしけんたかまつ)さんということになる。

 

背景が”視える”人がいたからこそ、問題をとらえ工事を一時休止させることができたのだろう。
 

具志堅隆松(ぐしけんたかまつ)さん

約40年の期間、沖縄戦で亡くなった方たちの遺骨を拾い上げ てきた具志堅隆松さん(2021年3月に沖縄県庁前で抗議のハンストを決行。下記記事参照)。  

amahaji.hatenablog.com

 

現時点の熊野鉱山の状況は?

この熊野鉱山の採掘では、十数億円の利益が出ると業者が試算している。2021年5月沖縄県からの指示で、遺骨に配慮しながら採掘を進めてもよしとする許可が出ている。今後どうなるのかな? というところにきています。(非常にざっくりとした説明で恐縮です)。

 

現地に行くことの意味

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あだんの影

糸満までバスで行って、歩いて。

農地や丘陵を目にして、その「広さ」、実際のスケールを体感できたのが今回の意味。

「ここを歩くのは大変だっただろうなあ」と。

 

自分を守るものがない空の下。

だだっ広い丘を逃げ、嘆いても泣いても追いつかない極限状態で、

やまない爆音の中、崖っぷちに追いつめられ、

恐怖にふるえながら標高80mの崖を飛んだ人たち。

 

その姿は、想像の空の下にしかない。 

けれども、できごとを「知ろうとすることはできる」とおもっている。


 

★おすすめの本

cocoonコクーン)」今日マチ子著(秋田書店)※漫画です

本来なら甘いお菓子を食べていたはずの少女たちが、砲弾と血の中で極限の心理状態に追い詰められていく様子がわかる。繊細な線で描かれるページに登場する、「自決(死ぬ)よりも生きるほうを選ぶんだ!(大意)」という強いせりふの響きが印象に残る。

 

沖縄県内の図書館では、那覇市立若狭図書館、沖縄県立図書館(ゆいレール旭橋最寄り)ほか多数の図書館に収蔵あり。

宮古島市立図書館でも読めます。旅先の図書館で本を読むのはなかなかいいものですよ。

 

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cocoon今日マチ子著(秋田書店

 

余談:毎年 6月23日に摩文仁ヶ丘でおこなわれる慰霊の日。2021年は記事中に登場した具志堅さんがふたたび摩文仁現地でハンストをされる。

筆者は当日、「あめ玉持ってこ」とおもっている。甘いあめ玉を食べたかったであろうたくさんの子どもたちや少女たち、大人たちに捧げるために。 

 

 

おまけ【糸満までバスで行け!情報】

那覇バスタの1Fに「那覇バス」の事務所がある。時刻表をもらうとよい。

・バスの時刻を検索できる「のりものNAVI okinawa」も使える。 → 乗換案内

・バスに慣れない人は(筆者のように逆方向のバスに乗ってしまいかねないような)、那覇バスタの待合室の案内所に行くこと。そこで、乗り継ぎの時刻やどの停留所から乗ればいいかを聞くとよい。

・バスの中では、基本千円札と500円玉の両替のみ。高額紙幣は詰む世界が待ち受けています。

・2,000円のバス1日乗り放題パスがある。利用は乗車距離により判断必要。

糸満バスタから先の線(「ひめゆりの塔前」「玉泉洞前」など行き)は、行き帰りともに1時間に1本。